HOME > ディスクロージャー > 旧財団法人全国中小企業設備貸与機関協会 > 平成17年度事業計画書
平成16年度の我が国経済は、一部に弱い動きがみられるが、年度全体を通してみると、大企業製造業を中心に企業収益が大幅に改善するなど引き続き堅調な中、完全失業率が改善する等雇用環境に持ち直す動きが見られ、民間需要中心の回復が続くものと見込まれる。こうした中で、中小企業においても、地域間にバラツキがみられるものの回復は全体に広がりをみせ、明るい兆しが見え始めてきた。しかしながら、地域や業種による格差、大企業と中小企業の格差も見られ、全体的に見ると小規模企業者等にとっては、景気回復の波及はあるものの、まだ本格回復には至っていないという状況下にあり依然楽観できない状況が続いている。
2月の月例経済報告によると、「景気は一部に弱い動きが続き、回復が緩やかになっている」との基調判断であるが、設備投資は企業収益の改善が続いていることから増加するとしていること、また、民間設備投資の先行指標である12月の機械受注統計によると、「持ち直しの兆しがみられる」としているところから、小規模企業者等に対しても波及していくことを期待したい。
平成16年度の小規模企業設備資金貸付事業の事業実績(1月末現在)をみると、設備貸与事業の実施機関は、40機関、事業規模391億円に対し申込額は231億円(前年度比10%増)、決定額は175億円(前年度比23%増)となっている。他方、設備資金貸付事業の実施機関は、37機関、事業規模215億円に対し申込額は117億円(前年度比27%増)、決定額は89億円(前年度比44%増)となっている。両事業とも、平成16年度末の実績は、前年度を上回るものと見込まれる。
小規模企業設備資金制度の根拠法は、平成11年の「中小企業基本法」の改正に則して改正され、新たに「小規模企業設備導入資金助成法」となり、5年経過した。この間長期にわたる景気の低迷、市中金利が超低金利であるため本制度の有利性が低減したこと、制度の対象企業が小規模企業者に重点がおかれたこと等の要因により、本制度の利用実績は、平成14年度まで減少の一途をたどってきたが、平成15年度後半に入り景気の持ち直しの動きが見られるようになったこと等により、設備投資需要が小規模企業者等にも波及し始め、ようやく底を脱した。
平成17年度の小規模企業者等の設備投資動向は、全貸協が本年2月に実施した「小規模企業者等機械設備投資動向等調査」によると、平成17年度上半期に機械設備投資計画が「ある」とする企業割合は、全産業で58. 5%と、前年同月比で、4.6ポイント増加している。特に、従業員規模が「21人以上」の企業で計画が「ある」とする割合が高くなっている。
平成16年度の小規模企業設備資金制度の申込状況をみても、従業員規模が「21人以上50人以下」の小規模企業者以外の中小企業者、いわゆる“特認枠”に該当する企業の申込が増加しており、現行制度では“特認枠”が事業規模の25%以内に制限されているため、これらの企業からの利用を断らざるを得ないケースが出ているという声が多くの貸与機関から寄せられていた。このため、全貸協としては、小規模企業者に準ずるこれらの企業層のニーズに応えるため、かねてより、国に対して小規模企業者以外の中小企業者に対する貸付枠を、現行の貸付予定総額の2.5割以内を5割以内に拡大するよう要望してきたが、本年3月に、特認枠の拡大が図られることになった。これに伴い小規模企業者に準ずる中小企業者に対して改めてPRを積極的に展開し周知していく必要がある。
このように、景気の回復に伴い事業実績に回復の兆しがみられるようになったが、他方、小規模企業設備資金制度を推進していく上で、また、全貸協並びに貸与機関が事業を運営していく上で改善を図っていかなければならない課題も多い。
小規模企業設備資金制度の改正については、一昨年の制度研究会の研究結果や貸与機関の意見等を踏まえ、小規模企業者等にとってより使い勝手のよい制度に改善するよう国に対して要望を行ってきたところである。しかしながら、制度の抜本的な改正は、法令改正を伴うことから早期改正は困難であるとして実現には至っていない。このため、全貸協としては、利用する小規模企業者等のニーズや事業実施機関である貸与機関の事業実態等を踏まえ、告示で改正できるものは早急に改善するよう要望してきたところ、国の理解が得られ、ようやく制度改正要望の一部が実現できたが、まだ解決しなければならない課題は多い。
近年、民間金融機関や政府系中小企業金融機関においては、担保や保証人に過度に依存しない融資を展開し始めているなど、金融機関の中小企業に対する貸出態度や融資制度に変化がみられる。本制度にあっても利用者である小規模企業者等のニーズに合った魅力のある制度にしなければ、利用者から敬遠されることになるため、魅力のある制度とするため制度改善を不断に行っていく必要がある。利用者数の減少及びこれに伴う貸与機関の収入の減少、倒産件数の増加に伴う不良債権の増大、機械類信用保険制度の廃止等により、事業休止機関が15年度から出現したが、平成17年度も事業を休止する貸与機関が更に増加する見通しであり、制度そのものの存続が危ぶまれる事態に直面している。
全貸協としても、制度自体の存続が厳しい局面にあること等を踏まえ、早急に制度利用者の利用実態・生の意見等を調査し、利用者の視点からみた制度の運用、金融・経済環境や利用者ニーズの変化等に適合した制度とするために、工夫・改善すべき点等は何かを検証し、制度が活性化するようその実現に向けて、引続き注力していくことが焦眉の課題であると思っている。同時に、制度を実施していく上で、小規模企業者等に対する適切な助言・情報提供事業は、本制度の重要な使命であるところから、借り受け者に対するコンサルタント業務に一層力を入れていく必要がある。
また、債権管理業務をよりきめ細かく適切に行うとともに、延滞・未収債権等を適確に把握し、その状況、実態に応じて迅速かつ適切な対応を行うことが求められている。これらの業務を円滑且つ適正に実施していくためには、継続的に人材を育成していくことが不可欠であるところから、貸与機関と連携しながら、職員の業務知識や能力の向上等を図っていくための各種研修等を効果的かつ効率的に実施できるよう注力していく。
平成18年度から公益法人制度改革の一環として、全ての公益法人が新公益法人会計基準により会計処理をしなければならないことになっているが、新公益法人会計基準への移行がより円滑かつ適正に行えるよう研修会を開催し支援していく所存である。公益法人制度改革については、政府は、「行政改革の方針(昨年12月閣議決定)」に盛込み、平成17年中に基本的枠組みの具体化に向けた詳細な検討等を行い、法案を審議の上、平成20年から施行するとしているところから、公益法人制度改革に関する今後の動向にも注視していく必要がある。
平成16年末には、政府において三位一体の改革、国と地方の役割分担について国と地方の間で議論されていた。地方六団体から指摘されている補助金の中に、設備貸与事業に係る小規模企業者等設備貸与事業円滑化補助金が補助金改革の対象となっていたが調整の結果、平成17年度予算額3.2億円は、従前どおり補助金として残ることになったが、この補助金を積極的に活用し、設備貸与事業の債権保全を図っていく必要がある。
その他、小規模企業者等に対する制度の周知、利用促進に一層努めるとともに、ホームページや「全貸協だより」等を通じ、小規模企業者等及び貸与機関への情報提供内容の充実を図る。
政府の平成17年度の経済見通しによると、世界経済の回復が続く中で、生産や設備投資が増加するなど企業部門が引き続き改善することを背景に、我が国経済は、民間需要中心の緩やかな回復を続けると見込まれるとしている。しかしながら、景気は踊り場にあり、なかなか抜け出せないでいるという状況下にあり、先行き停滞する懸念もあり貸与機関を取巻く事業環境及び小規模企業設備資金制度を巡る環境は、依然として厳しい状況下にあり取り組むべき課題も多い。
以上のような情勢を踏まえ、全貸協としても、事業運営の効率化により一層努めるとともに、制度が活性化するよう注力し、また、各貸与機関の事業運営が円滑かつ適正に実施できるよう積極的に支援していくために、平成17年度において以下の諸事業を行うものとする。
制度研究委員会
小規模企業者等にとって小規模企業設備資金制度を利用しやすい制度とするため、また、貸与機関の事業運営が適切に実施できるように制度実施上の諸課題について調査・研究を行う「小規模企業設備資金制度研究委員会」を設ける。
委員会は、下部組織である部会に対し調査・研究テ-マ等を指示し、部会は有識者、専門家及び貸与機関の実務担当者を委員とし、具体的な検討を行う。平成16年度は制度部会及び会計部会の二部会を設け調査研究を行う。
貸与機関の職員に対し、以下の研修事業を行う。